あの雨の日、きみの想いに涙した。



『このスマホに登録されてる女たちとこの紙切れ。冴木由希にとって必要なのはどっちだと思う?』

そう言う青木夏月の右手には一台のスマホ。左手には一枚の紙切れが。

『は?』

全く言ってる意味が分からなかったけど、ひとつだけ分かることがあった。〝このスマホに登録されてる女たち〟と言って青木夏月が持っているスマホ。


ケースもなにもなく素っ裸の黒いフォルム。画面のヒビ割れたスマホはどう考えても俺のものだ。


『てめえ、いつ取ったんだよ』

ポケットに入れておいたはずなのにいつの間にかなくなっている。本当に油断できない女だ。


『あんまりふざけてるとマジでキレるよ?』

『キレる前にちゃんと見て』

左手の紙切れをわざと揺らすような動きをして、そこには数字とアルファベットが書かれていた。

< 52 / 291 >

この作品をシェア

pagetop