あの雨の日、きみの想いに涙した。
『このスマホに登録されてる女たちとこの紙切れ。冴木由希にとって必要なのはどっちだと思う?』
そう言う青木夏月の右手には一台のスマホ。左手には一枚の紙切れが。
『は?』
全く言ってる意味が分からなかったけど、ひとつだけ分かることがあった。〝このスマホに登録されてる女たち〟と言って青木夏月が持っているスマホ。
ケースもなにもなく素っ裸の黒いフォルム。画面のヒビ割れたスマホはどう考えても俺のものだ。
『てめえ、いつ取ったんだよ』
ポケットに入れておいたはずなのにいつの間にかなくなっている。本当に油断できない女だ。
『あんまりふざけてるとマジでキレるよ?』
『キレる前にちゃんと見て』
左手の紙切れをわざと揺らすような動きをして、そこには数字とアルファベットが書かれていた。