あの雨の日、きみの想いに涙した。



レジ打ちでは愛想がないと言われて、接客では笑顔がないと言われて、皿洗いでは同僚と揉めてクビになった。

いくらクビになっても金を稼ぐためには次のバイトをすぐに見つけなければいけなかった。


そして中学を卒業して春休み。俺はこのパチンコ店の面接を受けた。履歴書には18歳と書いたけど、この店長にはすぐ嘘だとバレてしまった。

もっとも、中学生が高校生と偽ることはそんなに難しいことではなかったけど今回は高校生ではなく、高校を卒業した18歳と偽らなければいけなかった。中学を卒業したガキが18に見えるわけがない。


嘘がバレてすぐに門前払いされると思ったけど店長は『なんで?』と理由を聞いてくれた。

でも俺は絶対に親がいないことや家庭の事情を話したくなかったから『生活するために金がいる』『人と話すのが苦手だからあまり会話をしなくてもいいパチンコ店の面接を受けにきた』と淡々と説明するだけ。


俺の中では納得してもらうよりも、帰って次のバイトを見つけることで頭がいっぱいだった。

それなのに店長は『よし。じゃ、働いてみるか?』と耳を疑うようなことを言ってくれた。

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