あの雨の日、きみの想いに涙した。
「お疲れー」
閉店時間の22時を過ぎてフロアの掃除をしたあと、みんな各々に帰宅していく。
「冴木お疲れ」
帰り支度をしていた俺の肩を店長が叩いた。
「お疲れさまです」
店長の見た目はヤンキー時代の面影が残っているけど、他のバイトにいた店長たちと比べると、こんなに俺に親切にしてくれた人はいない。
だから仕事は大変だけど、働かせてくれた恩があるから頑張ろうと思える。
「お前、高校やめてここで働けよ」
店長がフーッとタバコの煙をはく。俺はなにも答えずにバタンとロッカーを閉めた。
「休日はいいとして学校がある日は全然稼げないだろ?」
「まあ……」
「お前は仕事ができるし、これから新人が入ってきたら指導できる立場になれる。だからここに身を置くつもりで働かないかなって」
嬉しい。嬉しいけれど俺は「考えておきます」と曖昧な返事をして帰宅した。
たしかに店長の言うとおり、時給がどれだけよくても学生が稼げる金額なんて限られている。
休日はこうして開店から閉店までフルで働いてるけど、学校がある日は18時から22時の4時間しか働けない。
たくさん働きたいと思うけどそれは全て金を稼ぐため。決して働くのが好きなわけじゃない。
今の俺にとってバイトと学校どっちが大切かと聞かれたら即答でバイトと答える。
だけど……学校を辞めて全ての時間をバイトに捧げるほど大人にもなれなかった。