あの雨の日、きみの想いに涙した。
ニコッと笑って、青木夏月は俺とは反対方向に歩いていった。その後ろ姿を見ながら俺は暫くその場に立ちつくしていた。
なぜか紙切れを持つ右手が熱い。
〝お助けナンバーだよ〟
白い紙に書かれた青木夏月の連絡先。
それをスマホに登録しようとは思わなかった。……だけど昨日みたいに捨てる気にもなれなかった。
それがどうしてなのか自分でもわからない。
〝青木夏月〟昨日初めて会ったのに違う一面を三回も見た。
一回目は物静かな大人しい姿。
二回目は堂々した強い姿。
三回目は優しい顔で笑う姿。
「本当にうぜ……」
俺はボソッと小さく呟いて、紙切れをポケットに入れた。