あの雨の日、きみの想いに涙した。
母親が苦しんでいた現場を散々見てきたし、アイツの暴力は絶え間なく俺たちに苦痛しか与えない。いっそのことナイフでひと突きしてくれたほうがラクなのにと思うぐらい。
早く大人になって母親を助けたい。それができるのは俺しかいない、なんてちっぽけな正義感すら芽生えていたのに、最後にした母親の行動はなにひとつ俺には理解できなかった。
父親の暴力を遺書に残すぐらいなら、なぜ生きてる時に警察に行かなかったんだろう。
暴力に耐えられなくて死んだって?
それならなんで俺は生きている?
そのあとも母親の分まで殴られ続けた俺は自殺なんかしない。死んだら終わりなんだ。なにもかも。
母親は俺を捨てた。ひとりで死んでいった。
それが優しさだと言う人もいるかもしれない。道連れにするよりも俺に生きろと伝えたかったのかもしれない。
でも、そんなのは綺麗事。
現実として残ったのは母親の優しさじゃなくて、変わらない真っ暗闇の日常だけ。
だから俺はあれから5年も経ったのに母親のことも父親のことも許せていない。
はあ……思い出したらイライラしてきた。