あの雨の日、きみの想いに涙した。
……なに言ってんだ、こいつ。
前に並んでいた竹田たちの番になって列に少しだけ空間ができた。
夕方の一番混む時間帯だけあって俺たちの後ろにもたくさんの人が並びはじめている。俺の足は前に詰めるどころか完全に止まってしまっていた。
「いらねーじゃねーよ。早くさっさと選べよ」
「だってあの飲みものはクジで当たったやつだもん。アンタも知ってるでしょ?」
こいつはわざと俺を怒らせようとしてるんだろうか。言ってることとやってることが矛盾し過ぎて理解不能だ。
俺は財布から小銭を出して青木夏月に押しつけた。その瞬間チャリンッと数枚の小銭が床に落ちていく。
俺は拾うどころかそんなの関係なしに足は前ではなく列を抜けて出口へと向かっていた。
「え、ちょ、ちょっと……!」
背後で青木夏月の慌てる声が聞こえたけど、もちろん完全無視。今日はマジで災難続きだ。早く家に帰って寝たい。
でも俺は知っている。青木夏月という女の諦めのわるさを。
「ちょっと待ちなさいよ、バカ!」
予感は的中。やっぱり追ってくると思った。