あの雨の日、きみの想いに涙した。
俺の腕を掴む手を勢いよくはらう。そして俺の胸辺りの背丈しかない青木夏月を冷めた視線で見下ろした。
「あのさ、そんなに俺にかまってほしいわけ?」
「うーん。かまってほしいわけじゃないよ。もっとよく知りたいとは思ってるけど」
「なにそれ、どういう意味?」
「うーん、自分でもよくわかんないけど」
「………」
本当にこの女はなんなのか。
でも今まで出会った女の中で一番面倒なのはたしかだ。思考が読めない以上、話していてもモヤモヤするだけだし、俺のことを知りたいと言われても、俺はこいつのことなんてこれっぽっちも知りたくない。
俺はそのまま無言で駅に向かった。改札を抜けて電車を待つホームでも青木夏月は俺の横にいる。
「付いてくんな」と言おうとしたけど、そういえば青木夏月は俺と同じ町に住んでるんだっけ……。
ってことは降りる駅も一緒かよ。
「まさかこのまま俺と香月駅まで行く気?」
「え?そうだけど?」
なにその、当たり前のことを聞かないでみたいな顔。
「はあ、マジで勘弁しろよ……」
そう言ったと同時に、だれかから声をかけられた。
「あれ?そこにいるのは冴木由希くんじゃん」
振り向くとそこには見知らぬ制服を着た他校の生徒。