あの雨の日、きみの想いに涙した。
まったく見覚えのない男だったけど、俺に声をかけてくるってことはろくなヤツらじゃない。
ニヤニヤとしながら数人の男たちは近づいてきて、なぜか隣にいる青木夏月のことを舐め回すように見ている。
「放課後まで女連れですか?いいね、モテモテくんは」
明らかに喧嘩を売っているような口調。
「おいおい。冴木くんはモテるなんてレベルじゃねーよ。なんたって白石高校全員の女とヤったんだからさ」
自分でも忘れかけていた噂を思い出した。
もう他校まで広まってんのかよ。本当にうぜーな。
俺は否定するどころか男たちを相手にしなかった。喋るのもだるいし、どうせあと5分で電車がくるし、べつにどんな噂が流れようとどうでもよかったから。
「バカみたい」
俺が無言を貫いてるのに口を開いたのは青木夏月だった。