あの雨の日、きみの想いに涙した。
俺が呆れた顔でため息をつくと、タイミングよく電車が到着するアナウンスが流れてきた。
……はあ、長かった。早くこの空間から解放してくれ。
「あ?まじ女だからって調子乗んなよ」
「は?調子乗ってるのはアンタ達でしょ?」
電車がホームに入ってきてもまだ言い争いは続いていた。
「本気でうぜーわ、この女。ちょっと痛い目に合わなきゃわかんねーの?」
電車はゆっくりと停車してプシューッとドアが開く。その瞬間、男の手が青木夏月に伸びてきた。
その体に触れる寸前で俺は青木夏月の手を掴んで電車の中に放り投げた。
「「あ……」」
青木夏月と男たちの声がなぜか揃って、その隙に俺も電車に飛び乗った。
「女相手にムキになってんなよ。バーカ」
そう言ったあとに電車は閉まって、窓越しで男たちの唖然とした顔が滑稽(こっけい)で笑えた。
次の電車まで30分以上あるのに可哀想。まあ、自業自得だけど。