あの雨の日、きみの想いに涙した。




ガタンゴトン……と揺れる車内で、俺は青木夏月に言いたいことがたくさんあった。

「あのさ、あんなヤツらいちいち相手にすんなよ。時間の無駄だしお前がムキになる必要はどこにも……」

「グスッ……ッ……」

思わずギョッとした。だって青木夏月が目を真っ赤にしながら泣いていたからだ。


「な、なに泣いてんだよ?放り投げた時にどっかぶつけた?」

青木夏月は全力で首を横に振っている。

「じゃあ、なんで………」

俺は女に怒られることはあっても泣かれたのははじめてだ。そもそも俺と関わりのある女なんて突き放せばすぐに切れるほど軽い関係で、涙を流すまでの関係じゃない。

だから、困る。色々と。

どうしていいのかわからない。


「……ムカつく……」

「え?」

「あいつら超ムカつく!すごい悔しい……」

青木夏月はまだ怒りが収まっていないようだ。
悔しい……?悔しいから泣いてるのか?

「……なんでお前が悔しいんだよ。わけわかんねえ」

すると青木夏月はムッとした表情で俺を見た。


「悔しいよ!冴木くんのことをあんな風に言われて。……本当に腹がたつ」

……俺がわるく言われることがムカつく?

それで泣いてるのか?

……やっぱりわけがわからない。

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