あの雨の日、きみの想いに涙した。
車内では空席がぽつりぽつりとあったけど、俺たちは座らずにドアの近くに立っていた。
暫くすると青木夏月は少し落ち着いたらしく、涙は止まっていた。
「……冴木くんはいつもあんな風に喧嘩を売られたり、嫌なことを言われたりしてるんだね」
外の景色を見ながら青木夏月が呟く。
その瞳はとても悲しげで、胸の奥がざわっとした。
なんでそんなに落ちこんでいるのか。そんな顔で……そんな泣いたあとの顔で落ちこんでんじゃねーよ。
「……べつに自分が他人からどう思われていようが興味ないから。つーかお前が冴木くんとか言うと気持ちわるい」
「あ……はは、そっか。本人の前では呼んでなかったもんね」
「……?」
少しだけその言葉に違和感を感じた。
「じゃあ、これからは冴木くんって呼ぶから冴木くんは私のこと〝青木〟でいいよ」
青木夏月はニコッと眉を下げて笑った。
泣いたり笑ったり本当にわけがわかんないヤツだ。
でもなんだろ……この気持ち。
他の女とはなにかが違う。
青木夏月は違う。