あの雨の日、きみの想いに涙した。
俺は絶対に女を名前で呼ばない。
ひとりの名前を呼んだら全員を呼ばなきゃいけなくなるし、顔も覚えられないのに名前なんて覚えられるわけがない。
女はいつも下の名前で呼んでと強要する。そのほうが特別だからって、そのほうが親しげだからって。
でも青木夏月は名字で呼んでと笑う。
〝青木〟
なぜだか呼べる気がした。
それは名字だからかもしれないけど、俺にとって女は全員同じに見えて、女は女というひとつのカテゴリーで認識しているのに、青木夏月はなぜかその枠には入らなかった。
それがなぜなのかなんて、説明できるわけがないけど、今までにない変化だということはたしかだった。