あの雨の日、きみの想いに涙した。
「ここだよ。まだ目的地じゃないけどね」
自慢気に連れられた場所は中学校だった。しかも俺が卒業した中学。
俺が拍子抜けしてる中で青木は門の隅っこの隙間にスルリと体を入れてあっという間に学校の敷地内に入ってしまった。
「早く、早く」
門の向こう側で青木は手招きをしている。
「俺がこんな小さい隙間、通れるわけねーだろ」
小柄な青木だから通れる話で、普通の女でもなかなか難しいほどの狭い隙間だ。
「えーイケるよ!冴木くん背は高いけど細身だし大丈夫」
だから大丈夫じゃねーつーの。……たく、面倒くせーな。
俺は門に足を掛けて隣の弊(へい)から中に入った。
「えーすごいね。冴木くんって身軽なんだ」
「べつに。いつも遅刻してた時によじ登ってたから」
「えー!冴木くんってここの中学校だったの?」
青木の声がやたらと夜だから響いて聞こえる。夜に学校に入ったらまずいって自覚してんのかな……。