あの雨の日、きみの想いに涙した。
学校の敷地に入って青木が次に足を止めたのはプールだった。
今の季節はプールに水が入っていて俺もたしか1、2回は授業で使ったことがある。もちろん、ほとんどサボってたからプールの授業とかまったく記憶にないけど。
プールの周りは緑色のフェンスが覆われていて、中に入れないようになっていた。
……ガチャ、ガチャ。
「あれ、おかしいな」
青木は入り口のカギを一生懸命いじっている。
「もしかしてこの中に入るつもりだったわけ?」
「うん……。ここのカギすごく錆びてたからすぐに外れたんだけど……あれ……」
月明かりに照らされたカギはぜんぜん錆びついていなくて、むしろ銀色に光っていた。
「カギ新しくしたのかな……。プールに映る月と星が綺麗だったのに」
青木は諦めきれないのか無理やり開けようとしていて、その指が危なっかしくてケガでもしそうな勢い。
「お前みたいな侵入者がいるからカギを変えて正解だな」
俺はフェンスに寄りかかりながら、何気なく上を見上げた。
「あーダメだ……開かない」
「べつにいいよ」
「そんな……」
「もう綺麗じゃん。星」