あの雨の日、きみの想いに涙した。

〝綺麗〟という言葉がすんなり出てきた自分に驚いた。夜空には無数に光る星が輝いていて、星なんて見たのは何年ぶりだろか。

いつもきっと夜になれば頭上にあるもののはずなのに、いくら辿ってもこんな風に星空を見上げた記憶がない。


「本当だ。やっぱり快晴の日の夜は綺麗に見えるね」

青木は嬉しそうに俺の横に並んだ。


たぶんこいつは……。青木は毎日星を見てるんだろうな。

キラキラと光る星を見る青木の横顔は綺麗で、なんの汚れもない透きとおった瞳。


同じものを見てるのに、同じ星を見てるのに俺とはぜんぜん違う。


「……ん？なに？」

青木がパッとこっちを見た。その瞬間、思わず顔を背けてしまった。


「えーなに？私の顔になにか付いてた？」

「……べつに。つーか、つーかさ、俺と星を見てなにがしたかったの？」


星なんてひとりでも見れるし、ましてや俺とじゃなくたっていいわけで。それに、女とこんな風に肩を並べるのは初めてだったから。


「えーなにもしないよ。ただ星を見て綺麗だねって言い合いたかったの。冴木くんと」


〝なにもしない〟

そんな普通の言葉が俺にとっては普通じゃなかった。

だって女といたらなにもしないなんてことはありえなくて、みんななにかを求めてきた。


今日だって青い空の下で俺は……普通じゃないことをしてた。求められれば受け入れて、そんな時間の過ごし方しか俺は知らない。


〝星を見て綺麗だねって言い合いたかったの。冴木くんと〟


それだけでいいの？

俺はなにもしなくてもいいの？