先生と私
「カオル!一緒に帰ろうぜ!」
放課後、チャイムが鳴ると同時に良が私に声をかける。
別れてからも、私が良を避けないからか一緒に帰ったり、部活に出たりしていた。
そのたびに私だけ胸を痛めて、何を話したらいいのか、
どんな態度をとればいいのか、たくさん悩んでいる…
うん。
多分私だけが一方的に悩んでいると思う。
「名波!お前残れる?」
悩んでた私に声をかけたのは先生だった。
「んだよ。俺ら帰りたいんだけど」
良が言い返す。
「お前じゃないもん。残るのは名波!」
先生も言い返す。
良の顔が明らかに不機嫌になる。
「良、明日は一緒に帰る。」
私はそっと良の手に触れた。
良は諦めてため息をつき、先生を睨んで帰って行った。
私は分かっている。
良がなぜ、私を離さないか…
私が良を好きなのは知っているから気分がいいんだろう……―
自分は好きじゃないのに、好かれているのは気持ちいいみたい。
「ごめん。帰りたかった?」
「ううん。ありがとうございました!」
先生はニコッと笑うと先生の机に座った。
「どうせだから資料作るの手伝ってってよ。」
「いいですよ?帰りはまた送ってくれるんですか?」
「いいよ。歩きだけどね!」
先生との会話はきっと騒いでる生徒達には聞こえないだろうな。
私だけの特別な時間だった。