先生と私

「来い!」


先生は少し怒った口調で私の腕をつかんだまま歩き出した。


生徒指導室に着くと先生は優しい声で

「入りなさい」

と、言った。


「大丈夫だょ。ここには誰も来ないから」


先生はそう言うと、温かいコーヒーを出してくれた。


コーヒーをひと口飲んだ。

自分の思いとは裏腹に落ち着いたのに身体がガタガタ震えた。

「お前、隠すの下手だね」


先生はそう言って笑った。


「先生…」


「ん?」


「コーヒーマズい。甘くない」


「よし!次は砂糖を買っとくよ」

先生は私の頭を撫でた。


私の身体の震えが治まるまで、涙が止まるまで、優しく撫でてくれてた。
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