先生と私
「名波!」
顔を上げるといたのは先生で、私の頬を見るなり駆け寄った。
「どうした?誰に!?」
「違う!ボールが当たっただけ」
胸がドキドキする―…
あ…私、やっぱり先生が好きだ。
どうしたらそばにいられるの?
ねぇ、ねぇ…ー
「痛いよぉ…」
グズグズ泣き出した私を先生は黙って保健室に連れて行った。
「佐藤先生、私やりますょ?」
保健室のおばあちゃん先生がテキパキ処置を始めとする先生にそう言ったけど、聞こえなかったのか先生は黙ったまま続けた。
「お先に失礼しますね。鍵、ここに置きますから。」
おばあちゃん先生はそう言って申しわけなさそうに帰って行った。
「なんだ?」
「え?」
「聞きたいことはなんだ?」
先生はそう言うと処置していた手を止めて私の目をジッと睨んだ。
「お前の気持ちくらい受け止める覚悟はできてんだぞ?早く言え!」
言えないょ…
「何でもない」
「朝からその態度…気にしてないとでも思ったか?」
バレてる―……
「何でも答えてやるよ。どんな事だって聞いてやる。」
「…―」
「カオル?」
あ…―
「初めて呼んだ―…名前」
ヤバいくらいドッとあふれる涙の粒だった。
「呼ぶだろ…名前くらい」
照れくさそう下を向いて救急箱をしまう先生が愛おしい。
「先生が先生だから気になるんだよ…私は先生と一緒にいてもいいの?」
「バカだな。」
涙がとまらない。
ホント、ばかみたい。
先生が近くにいればさっきまで気にしてたことが何ともない
ただ目の前のこの人が好きだとしか感じない