先生と私
「生徒だぞ?」
牧野先生に言われてハットした。
「どうした?」
掴まれた右腕があったかくて更に泣けた。
「すみません…」
私はハンカチを出そうとポケットの中を探った。
あはは………―
ハンカチも無くしたみたい。
「ほれ。」
探すのをやめた私に牧野先生が差し出したのは自分の着ていたワイシャツの裾だった。
「??」
「悪いな。俺もハンカチ無いから。ここで涙ふけよ。」
「ははっ。ふけませんよ。」
「だょなぁ…―」
思わず2人で笑った後にまた掴まれた腕の温かさに気づいて恥ずかしくなった。
「お前はさぁ、何につけても頑張りすぎだぞ。力抜け!」
そう言われて腕を離した牧野先生は教室を先に出て行った。
何にも知らないくせに…―
何にも……………
私は生徒に好きだった人を取られて手まであげたのに…
優しくしないで。
私は何があの子と違うのか、私がアキラに好かれなかったワケを探してみた。
何となく今の自分では好かれない事くらいはわかった。