先生と私

「どうしたの?」


連れてこられた場所は保健室ではなく、数学準備室だった。


私はこの“数学準備室”という場所があることを初めて知ったから泣くのも忘れてしばらく教室内を眺めた。


「いいでしょ?落ち着くのよ。」

花村先生が言うのもわかる。


準備室というよりは花村先生の部屋だ。


カーテンが薄いピンクなのも、コーヒーのカップも紙ではなく先生が持ち込んだ花柄のついた可愛い物なのも。


「私の事、気にしてる?」


花村先生はコーヒーを入れながらこっちを見ないで聞いた。


「…それもあったけど…―」


出されたコーヒーの匂いが甘くて、

前に佐藤先生と飲んだ苦いコーヒーを思い出した。

泣くのをもぅこらえられない。

私は花村先生に全てを話した。
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