べガとアルタイルの軌跡
「槙原くん? なんで? 東京じゃ……」


「3年あっちに居て、今年から仙台に戻って来た」


「戻って来た? 彼女も一緒に?」


「は? 何、その『彼女』って? 誰の事?」




えっ?




「奈々美ちゃんに聞いたよ? 秋野さんが槙原くんを追いかけて東京に行って、2人で一緒に居るって」


「はぁ?! なんだよ、その話。確かにあいつも東京に行ったけど、俺じゃなくて東京に行った俺のバイク仲間と付き合っていて、そいつ追いかけて行ったんだけど?」


「えっ? そうなの?」


「なるほど……これで全て理解した」


「えっ?」




槙原くんは無言のまま、すぐ私の目の前まで来て、覗き込むように私の顔を見た。





「あいつと付き合っていると思ったから、俺との距離を置こうとしたんだ、あの頃。そして、さっき言った『さようなら』って、俺の事、忘れようとしたんだ……そうなんだろ?」



久し振りに見る槙原くんは、なんだか違う大人の男に見えた。



すると、クスッと見慣れた笑顔に変わった。



「俺の織姫はやっぱり薄情だよなぁ。旦那が天帝の怒りをかわないように、3年単身赴任で真面目に頑張ってきたって言うのに、帰って来たら『さようなら』だなんて」


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