フェアマン~愛しい彼はハーフの男の子~
勇太のつむじを見ながら思う。彼の髪は黒色なので私達日本人とそう変わりないが、とても可愛く見えた。
「さてレイシーの席だが、ひとまず窓側の一番後ろにした。外の景色が見るから、気分転換しやすいと思ってな」
『えーっ!』と女子生徒が不満げに叫んだ。みんな勇太と早く仲良くなりたいから彼の側に座りたいのに、その権利をもらったのは彼の前と右斜め前に座った女子だけだから。
「女子生徒諸君は不満のようだが、レイシーがここの空気に慣れるまで席替えは待ってくれ」
「今すぐしたーい!」
「私もーっ!」
「と言うことで、ホームルームは終わりだ。いつもより10分も予定をオーバーしているしな。さあ、一時間目の授業もテンポ良く行くぞー!」
「えーっ、やだーっ!」
「野田先生、お待たせしました。本日もためになる日本史の授業、お願いします」
担任の教師は出欠簿をさっさと片づけると、いつの間にかドアの前にいた教師へ声をかけた。そして勇太の肩をポンと叩くと、教室を去っていった。女子生徒達の野望には全く触れようとしなかった。
 勇太は私が座った席の列からほど遠いところを歩き、いつの間にか用意されていた席に座った。席の右側には白いリュックサックがかけられ、机の中から真新しい日本史の教科書やノート、ペンケースを取り出した。どうやらずいぶん早い時間に来て用意していたようだ。
 足の長い彼は少し窮屈そうに机を使っていた。膝下が長いからだろう。しまいには前へ投げ出し、ようやく落ち着いた。
 おそらく彼が使っている机は、特大に違いない。側に座った女子が使っているものよりずっと大きいから。
(そんなところも、なんかいいなぁ。もっと勇太君のこと、知りたいなぁ…)
他の女子同様、私も思った。告白してさんざん痛い目にあってどこか後ろ向きだったのに、珍しい事だった。




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