フェアマン~愛しい彼はハーフの男の子~
(ひっろーい!ここだけで我が家がすっぽり入っちゃいそう!)
右手にある管理人室の反対側には、シルバー色で筒状の台の上に電話のようなボタンがついたものがあった。オートロックのシステムだ。高い家賃のマンションである事を証明する防犯システムだ。
(これがあるって事は、間違いなく家賃が高い。エントランスの豪華さからして、部屋の中はどんだけすごい事になっているの!)
期待に胸を膨らませ、勇太がボタンを押すのを背後から食い入るように見た。
 勇太がボタンを押して間もなく、高さ3メートル、横2メートルほどの大きな1枚ガラスが静かに右横へスライドし、開いた。入り口を抜けると、横長で10畳の広さがあるエレベーターホールに出た。しかもエレベーターは大きかった。私の友達でマンションに住んでいる人は沢山いて、何度も遊びに行った事があるが、大きさは2分の1か4分の1しかなかった。
「エレベーターが来たよ。どうぞ」
「あ、ありがとう!」
ふと勇太を見れば、エレベーターの扉を押さえてくれていた。
(こ、これはレディーファーストって言うやつ?きゃーっ!お姫様みたい!)
ルンルンしてエレベーターに乗り込めば、中も予想通り立派で広かった。すっかりテンションが上がった私はエレベーターの中も隅々まで見て、10階で降りた。
(うわーっ、やっぱりホテルみたい!)
白色の壁に艶やかに輝く黒色のドアが、向かい合わせで静かにたたずんでいた。クリーム色でタイル張りの床も掃除が行き届き、一瞬高級ホテルに見えた。こちらもジロジロ見ながら勇太の後をついていくと、左手に並ぶ三つ目のドアの前で止まった。
 ドアには正方形で銀色のプレートに、黒字で勇太の家族の名前が四名分彫られていた。感じとカタカナ、ローマ字で彫られている。
(とうとう来たのね!なんか嬉しい!)
ただ急に心臓がドキドキしてきた。

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