フェアマン~愛しい彼はハーフの男の子~
「それが、来るって聞いたから、はりきっていっぱい作っちゃったの。かえって食べてくれないと困っちゃうわ」
そう言うと、カレンはキッチンからレタスやタマネギのスライス、手のひらサイズの薄いホットケーキみたいな物、トマトを小さなサイの目切りにした和え物と、炒めた挽肉などを大量に持ってきた。
「うわー、何ですかコレ」
「タコスだよ。メキシコ料理なんだけど、我が家の大好物なんだ。…辛い物は苦手?」
「あまりにも辛い物は…でも、ちょい辛は大好き!」
「そう言うと思って、辛さは控えめにしたわ。辛さが足りないようなら、このタバスコをふってみて」
「本当に食べていいんですか?」
「ええ。さあ、どうぞ遠慮なく召し上がれ」
「じゃあ、頂きます!実はおなかが減ってペコペコだったんです。ごちそうしてもらえて、すっごい嬉しいです!」
「食べ方はわかる?」
「いいえ、ぜんぜん。我が家はこんな洒落た物、出ないもんで」
「ジャパニーズ・オンリーなんだ」
「イエス!ジャパニーズ・オンリーです!」
ふいにカレンは吹き出した。私と勇太のやり取りが面白かったらしい。
 ひとしきり笑うと、ようやく食べ方を説明してくれた。
「ここにあるひき肉の炒め物やトマトの和え物を、このパンケーキを薄くしたようなモノ…トルティーヤって言うんだけど、これに乗せて包んで食べるのよ。コツとしては、欲張って具を乗せすぎないこと…って。言っている側から乗せ過ぎよ!」
「だって、おなかが空いているんです!こう、ガブッとかみついて、口いっぱいほおばりたいんです!」
私は忠告を無視して、具を満杯に包んだタコスに端からかぶりついた。すると反対側から具が飛び出し、慌てて左手でキャッチした。
「Oh,gosh!言わんこっちゃない!」
「ほひひーっ!」




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