フェアマン~愛しい彼はハーフの男の子~
 書き込まれたコメントを見れば讃辞の嵐で、『続き、楽しみにしています』、『がんばってください』と応援メッセージがたくさんあった。嬉しさのあまり、叫びそうになった。この事がちょっとした騒動を引き起こすとは知らずに。
 朝、密着取材をしようと学校へ行くと、正門100メートル手前からメイクをバッチリ決めた、デートにでも行くかのように着飾った女の子達が沢山ウロウロしていた。どの子も手に携帯電話を持ち、ひっきりなしに右を見たり左を見たりしている。まるで芸能人が来るのを待ちかまえているかのようだ。
(誰か来るのかな?女の子ばかりいるって事は、もしかして…男性アイドル?えーっ!珍しい!見たーい!…でも、勇太の密着取材があるんだよな。あーやっぱりダメだ。ブログ、1万アクセスもあったんだ。サボったらみんなガッカリする。しょうがない、あきらめるか)
後ろ髪を引かれる思いで自転車のペダルを漕ぎ、人垣の厚い正門を抜けた。抜けると、しぶしぶ駐車場に自転車を止めた。
 すると突然、女の子の『やだーっ!』と言う声が聞こえた。ビックリして振り返ると、正門の内側に沢山いる女の子を迷惑そうに見ながらかき分け通っていく男子生徒の姿が目に止まった。そうかと思いきや、ワイシャツ姿の先生が2,3人やって来て、『何をしているんだ!』と怒鳴った。
(何で怒っているの?アイドルを呼んだのは学校の方じゃないの?そうじゃなきゃ、こんなに人が来ないよ。…あれ、でも、学校に来るなら、どっかから情報入ってこない?たとえばコマキちゃんとか。けれど昨日、コマキちゃんは何も言っていなかった。今朝来たメールも取材の日程についてだし。つまり、学校側が強力なブロックをしたって事?そうなの?)
ふいに私はハッとする。
(もしかして学校がアイドルを呼んだんじゃないのかな?アイドル自らやってくるのかな?アポイントメントも取らずに)
私は首をひねる。

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