フェアマン~愛しい彼はハーフの男の子~
「大丈夫って言ったろ。第一、あそこまで完成させるの大変だったじゃないか。1日で中止なんて、考えただけで泣きたくなる。そっちの方が辛い」
「よかった。じゃ、またがんばって密着取材するかな。あっ、コマキちゃん、お昼に取材してくれるって言っていた。良いトコ見せなくちゃ」
「そうなの?驚いた。なんかすっかり有名人だね」
「でしょ?」
「ただ、忙しいところ申し訳ないんだけど、帰るまでにできるだけ原稿上げて。そうしたら、少しでも早くアップできるから」
「了解!」
私はようやく笑う事ができた。勇太もお茶目にウインクした。
 おかげで体育の授業の後、一騒動あったがヘコまずにすんだ。
(負けないもん!勇太君だって、ブログを続けようって言ってくれたし)
勇太の言葉は、どんな栄養ドリンクよりも私を元気にしてくれた。
 ちなみに。騒動の原因は勇太のブログだった。ブログが想像以上の反響を呼び、朝から正門前が賑わったので、不審に思った先生達が待っていた生徒達に聞き込みをし、私の名前を探し当てたのだ。そしてこれ以上事態が深刻化しないよう、生活指導担当の先生が、体育の授業が終わった私を捕まえ生活指導室へ引っ張り込んだ。釘を刺すために。昨日、コマキがクラス中を駆けめぐって知らせた号外の影響ではない。
(杉山先生、けっこう苦手なんだよなー)
体育会系の大学を出てきた杉山先生は、目が鋭い上に年中ボウズ頭で、ジャージ姿。先生だと知っていなければ、ヤクザかと思う風貌だ。根は優しいのだが、悪さは決して許さない厳しさが売りで、一日を快適に過ごしたいなら、出来るだけ関わらない、気にしない、存在を忘れる、この姿勢で臨まなければならなかった。
(でも、今回はダメだっった!)




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