フェアマン~愛しい彼はハーフの男の子~
年期の入った茶色い折りたたみ机を挟み、向かい合わせでパイプ椅子に座ると、杉山先生は胸の前で腕を組み見下ろすようニラんだ。私は恐ろしくて、すぐさま下を向いた。
(目を見たら、石になる。目を見たら石になる…)
今の私には、杉山先生はメデューサに見えた。ハゲ頭にヘビがいる気さえする。
「おい、村瀬」
「は、はい!」
「今朝正門前で起きた騒ぎの原因は、村瀬が始めたブログなんだって?」
「そうと言われれば、そうかもしれません…」
「そうと言われればだぁ?」
杉山先生は少し声を荒げた。私は恐ろしくて、ビクッと体を震わせた。
「しらばっくれても無駄だぞ。調べはついているんだ!」
「は、はい!」
「女子生徒に聞いたら、すぐお前の名前があがってきたぞ。そして、勇太・レイシーのブログをつけていることも」
「はい!」
「なぜ俺がここまで怒るかわかるよな。つい2週間前、トゥイッターの書き込みが原因で、A校の生徒がB校の生徒と乱闘騒ぎを起こしたって、校内がざわめいていたからだ。お前はもう忘れたのか?」
「い、いえ。忘れていません!」
「だったらなんで学校名まで入れてブログを公開する?世の中良い奴ばかりじゃないんだぞ!レイシーに何かあったらどうする?お前は責任を取れるのか?」
「す、すいません…」
「とにかく。ブログは即刻中止だ。わかったな」
「えっ?」
私はビックリした。
(こ、このままじゃ、計画がダメになる。麗に勇太君を認めてもらえなくなる。何とかしなきゃ!)
とたん、授業開始を知らせるチャイムが鳴った。せっぱ詰まっていた私には『負け』を知らせるチャイムに聞こえた。

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