フェアマン~愛しい彼はハーフの男の子~
「ねえ、美羽ちゃん。練習の方はどう?」
「かなり調子いいよ。新人戦で優勝できるんじゃないかって思っているくらいだもん」
「うわー、スゴイ!私、応援に行こうと思っているんだ。楽しみー」
「手伝いはいいの?大会、土曜日だよ」
「今のうちからお願いしておけば大丈夫。きっと行かせてくれるよ」
「本当?琴美が応援に来てくれたら、絶対勝てると思う。良いとこ見せようと、はりきっちゃうから」
「がんばってね、美羽ちゃん」
「もっちろん!」
私はガッツポーズをすると、ニカッと口を大きく開けて笑った。冗談じゃなく、琴美に応援してもらうと勇気が出るから。
 正面玄関の前まで琴美を送ると、部活用のシューズに履き替え体育館へ向かった。靴を履き替えると、いつもすごくやる気が出た。
 ちなみに、琴美は部活をしていない。帰宅部である。両親が共働きなので、家事を手伝うためにどこへも入らなかったのだ。親思いの優しい子である。
 体育館へ向かって歩いていると、1年生の女子部員が『こんにちわ!』と元気に挨拶をし追い越して行った。ネットを張ったり用具を準備するために、急いでいるのだろう。
(今日もすばらしい挨拶ね。本当、今年の1年生は礼儀正しいしやる気があるわ!)
私は校長先生にでもなったかのように満足げにうなずくと、ちょっとエラそうに胸をはり歩いた。
 すると、再び後ろから誰かが小走りで走ってくる音が聞こえた。『バタバタバタッ』と短い間隔で足音が聞こえてくる事から推測して、かなりのスピードで走って来ていると思われた。
(ずいぶん急いでいるみたいだけど、ウチの部の子かな?でも、部活が始まるまでまだ20分以上ある。さっき追い越していった1年生だって、これから着替えて、ゆっくり準備するだろう。特に予定もなかったし。…たぶんウチの部員じゃないな)



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