フェアマン~愛しい彼はハーフの男の子~
「なんですって!」
麗は私が着ている制服の胸ぐらをつかんだ。
「ほら、やっぱりヤクザじゃない!」
「フザケんなよ!このアホ女!」
「ちょと、やめて麗ちゃん!」
「落ち着けよ、高嶋さん!」
側で見ていた琴美と、いつの間にか着ていた勇太が止めに入った。しかし麗は怒りにまかせ、つかんだ私の襟元をグイグイしめつけた。私は苦しくて息をするのもやっとだった。
 ただ、みなぎる闘志が苦しみを払いのけた。私に信じられないパワーを与えてくれた。
 私はギロリと麗をニラむと、胸一杯に息を吸い込んだ。冷静さは微塵も無かった。ただ彼女を『やっつけたい』と言う思いしかなかった。
「そんなんだから、バドミントン部を辞めさせられたんじゃない!」
ふいに麗はハッとした。しかし私は言葉を止められない。堰を切ったように怒りを含んだ言葉が溢れて、ひたすらぶつけ続けた。
「麗はいつも自分の意見が一番だって思っているから、誰の意見も聞かない。誰かがちょっとでもエラそうな事を言ったら、力づくでヘシ折る。そんなの、みんな嫌いに決まっている。だってヤクザと一緒だもん!」
「・・・!」
「大声出して、怒鳴りつけて、ニラみつけて、最後は『マジ、キモイ』とか言って。どれだけ人をバカにすれば気が済むの?どれだけ傷つければ気が済むの?相手を土下座させて『そうです、私はクズです、ゴミです。生きる価値もありません!』って認めないと納得しないの?」
麗はすっかりシュンとなった。しかしそれでも私は止められない。ワラワラと見物にやて来た人も、誰も止めようとしない。みんな黙って見ている。
「クズなのはアンタじゃない!新垣君が退部宣告したのも当然よ!二度とバドミントンなんかやる資格無い!」

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