フェアマン~愛しい彼はハーフの男の子~
「そうだね。恥かいたから顔出しづらいのかもしれないしね」
「私、麗ちゃん家にちょっと行ってみようかな」
「いいの?」
「うん。インターフォン越しでもいいから、声が聞ければ何か様子がわかるかもしれないでしょ?きっかけ作りに、今日配られたプリントを持って行くよ」
「でも、麗の家から琴美の家って遠いよね。大丈夫?用事ない?」
「うん。それに、ちょうど運動したかったから、良い機会だよ。シェイプアップも兼ねて行ってくる」
「よろしくね」
「うん。琴美ちゃんは、部活ガンバってね」
琴美はニッコリ笑うと、豊かな胸を揺らしながらもしっかりとした足取りで歩き、正面玄関を出て行った。彼女の背中は細いのに、とても頼もしく思えた。
 学校を下校した琴美は順調に公共の交通機関を乗り継ぐと、あっという間に麗の家に着いた。高校1年の時からの親友である。当然家には何度も言った事があり、迷うはずがなかった。
(でも、今日はなんか緊張する。まるで初めて訪ねるみたい)
琴美は一つ大きくため息をついた。とたん、携帯電話がメールを受信した。慌てて確認すれば、美羽からだった。
 内容は『麗に会えた?』それだけ。
(こんなに短いメールを送ってくるなんて…たぶん部活の合間を縫って送って来たんだろうな。よっぽど麗ちゃんの様子を知りたいんだろうな)
逃げたくても逃げられない状況を知り、琴美は覚悟を決めた。
(よーし、やるぞ!)
意を決し、インターフォンを押した。『ピンポーン』と言う優しい音色も、今日はそっけなく聞こえた。
(麗ちゃん、出てーっ!)
『ああ、こんにちわ』


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