フェアマン~愛しい彼はハーフの男の子~
「こちらこそ。無理言ってすいませんでした」
「いいえ。それより、ブログ、あと二日で終わりね。がんばって」
「はい。じゃ、そろそろ失礼します」
私はぎこちなさを残しながらも、どうにか帰ろうとした。
「待って。駅まで送って行くよ」
「えっ?い、いいよ。ブログまだやらなきゃならない事が残っているでしょ。気にしないで」
「聞きたいことがあるんだ。でもこれ以上遅くなるといけないから、送りがてら聞こうと思って」
「そう?じゃ、お願いしようかな」
キス未遂事件の余韻もあり胸はまだドキドキしていたが、勇太ともう少し話せるのだと思うと、やっぱり嬉しかった。
 カレンに別れを告げマンションを出ると、外はすっかり暗くなっていた。カゼも少し吹いていて、肌寒くなっていた。
「わっ、涼しい!」
「少しずつ秋に近付いているんだね」
「うん、そうだね」
するとふいに、私の肩に何かがかかった。見れば勇太が着ていた白い半袖パーカーだった。勇太は紺色のポロシャツ一枚になっていた。
「半袖だから気休め程度にしかならないけど、よかったら着て」
「ありがとう!…でも勇太君、寒くない?」
「ああ、大丈夫。若いから」
「それじゃあ、私、おばあちゃんみたいじゃない!」
私と勇太は大笑いした。
「じゃ、行こうか!」
「うん!」
そして私と勇太は並んで歩き出した。どちらが遅くも早くもない。勇太が私の歩みに合わせてくれているからだろう。
 するとサラリーマン風の50代くらいの男性とすれ違った。スーツを着た彼はチラリと私達を見たが、何事もなかったかのようにどこかへ向かって行った。
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