フェアマン~愛しい彼はハーフの男の子~
「それで煮詰まって考え方を変えた?」
「うん」
「でも、本当に麗って意思が強いよ。鉄並みにね!」
「ふつうならね。ただ、今は状況が違う。部活は止めさせられるし、クラスメイトには無視されるし、美羽ちゃんとは絶交状態だし。身から出たサビとは言え、すごく苦しいんじゃないかな」
「まあ、ねぇ…」
「あまりにも苦しくて鉄の意志も豆腐みたく柔らかくせざる終えなかったんじゃないかな」
「だとすると、すごいせっぱ詰まっているね」
「あれ、もしかしたら!」
ふいに琴美は『ひらめいた!』と言わんばかりに声を発した。目もキラキラ輝いている。
「今なら仲直りできるかもしれない」
「仲直り?そうカンタンに行くかな?」
「勇太君のブログへ書き込みしたくらいだもの。かなり考え方は柔軟になっていると思うよ。お互い歩み寄れるかもしれない!」
琴美ははりきって携帯電話を取り出すと、誰かにメールを打ち出した。
「あの、もしかして…そのメールの送り先は麗?」
「うん。もう8時35分過ぎているけど来ないところを見ると、今日も休むと思うんだ。このままじゃ仲直りできないでしょ?せっかく私達がやる気になっているんだから、アプローチしてみようよ。ダメで元々よ!」
「琴美って、案外チャレンジャーだよね」
「そう?美羽ちゃんには負けるよ」
琴美は左目でウインクすると素早くメールを打ち、あっという間に送信した。私は『そううまくいくのかな』と思いながら見ていた。
 案の定、一時間経っても二時間経っても返事は来ず麗はまたカゼで休んだ。絶対、仮病だった。
 わかってはいたが、やっぱりショックだった。私は休憩時間を利用して習字を書こうとしたポーズで待っている勇太に向かってカメラを向けたまま、ボーッとした。

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