フェアマン~愛しい彼はハーフの男の子~
とたん、私は一つのアイデアをひらめいた。しかし琴美には言わず、『バイバイ』と言って電話を切ると、勇太に近付いた。勇太は一年生の女子に『また明日』と言葉をかけると、私を見た。一年生の女子部員は全員、嫉妬のまなざしで私を見ていた。
(おお、怖い!でも、気にしない、気にしない。彼女達のために勇太君のブログを着けているんだから。ビビる事はない!)
『よし!』と小さな声で気合いを入れると、いつも通り私の自転車に乗り、電車の駅へ向かった。着けば電車に乗って勇太の家へ向かった。
 特に問題もなく勇太の家に着くと、順調に夕食の取材を終え記事を書いた。それを勇太の携帯電話にメールで送り、写真はパソコンに落とすと、少し早めに帰る事にした。
「急いでいるようだけど、何か用事でもあるの?」
「用事って言うか、見たいテレビがあるんだ。録画の予約してくるの忘れたから、早く帰らなきゃならないの」
「俺が録画しようか?」
「ううん、いいよ。晩ご飯ごちそうになったのに、これ以上甘えられない」
「それくらい、ぜんぜん苦じゃないよ」
「ありがとう。でも今日は本当にいいの」
「そう…じゃ、下まで送るよ」
「ありがとう」
マンションの一番下までエレベーターで行き、エントランスまで送ってもらうと、勇太と笑顔で別れた。そのまま足早に駅に向かい、着くと、すばやく切符を買って改札口を抜けた。この時点で、すでにだいぶん疲れていた。今日は色々あったから。
 一瞬頭の中を『アイデアの実行を止める』と言う考えが過ぎった。
(ダメダメ!やるの、絶対やるの!)
フゥと大きく息を吐くと、両手でベチン!と頬を叩いた。
 そう私はこの後、琴美と携帯電話で話した後に思いついたアイデアを実行にしに行くのだ。成功する確率はかなり低かったが、何もしないで悶々と考えるよりずっとよかった。
 
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