フェアマン~愛しい彼はハーフの男の子~
「お父さん、聞いた?この女、新垣に何でもベラベラしゃべってんのよ。本当、口軽い。…ううん、そうまでして男の気を引きたいわけ?モテなくて辛いのはわかるけど、手段が汚過ぎやしない?」
「ちょっと、私の話し聞いてよ!」
「聞く余地なんて無いわ。全ての原因はアンタにあるんだから!」
「違う!麗よ!もともと麗が勇太君に冷たくするから、こんな事になったんじゃない!」
「だってあの男、嫌い!帰国子女でハーフでちょっとイケメンだからって、頭に乗ってんだもの!」
「乗ってないわよ!麗がそう思っているだけでしょ!」
すると突然、麗は私の胸ぐらをつかんだ。やつれて悲壮感が増したせいか、迫力満点だ。しかし私も負けない。今のやり取りを聞いて麗がどういう状況にいるか、彼女の家族はよくわかったはずだ。普通の人なら欲目に見ても『麗が悪くない』とは言わないに違いない。『自分の犯した罪を認めなさい』と言うだろう。私は加勢してもらえる自信があった。
 案の状、麗のお母さんは止めに入った。
「ちょっと、美羽ちゃんに何するの?」
「これでわかったでしょ?この女が悪いのよ!この女のせいで学校に行けなくなったの。バドミントン部をクビになったの!」
「それは違うよ、麗」
「お父さんまで何よ!味方だと思っていたのに!」
「苦しいのはわかるが、美羽ちゃんの話しを聞いたところでは、今回は麗の方が悪い。美羽ちゃんも新垣君も、根回しして人を騙すような子じゃないのは父さんも良くわかっているから」
「娘を信じられないって言うの?」
「今回ばかりは信じられないな」
「何よ、人でなし!」
「そろそろ我を通すのは限界に来ているんだ。周りの意見を取り入れる事も覚えなくては」
「イヤよ、イヤ!」

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