フェアマン~愛しい彼はハーフの男の子~
色々推測しつつ正門のところまで行くと、高校入学時代から麗の追っかけをしている男子生徒が5人いた。彼らはいつになくソワソワして、ストレートコースの始まりを見ている。そこは登校して来る時、正門へ向かう時の最後の角を抜けた場所。生徒全員が通るのだ。つまり、一番最初に姿を現す場所である。
(麗の追っかけをしている男子がソワソワしているって事は、今日は麗が来るかもしれない!)
何だか私もソワソワしてきた。
(『来るの待っているから』って言ったけど、うわっ!どうしよう。なんか緊張するな。思わず目とかそらしちゃうかも。でも、それダメだよね。『やっぱり私に会いたくなかったんでしょ』って怒られそう)
ウダウダ考えていると、携帯電話の着信メロディーが鳴った。電話がかかってくると鳴るよう設定したものだ。制服のスカートの左ポケットから慌てて取り出し見ると、サブディスプレイには『勇太君』と名前が表示されていた。
「もしもし?」
『おはよう。無事学校に着いた?』
「う、うん。今、正門のところにいる。勇太君はどこにいるの?」
『学校へ向かう最後の角のところ。今からそっちへ行くから、待っていて』
「わかった。自転車を置いて待っているね。…あ、でも、なんか今日はいつにも増してたくさんの人がいるから、ケガしないよう気をつけてね」
『ありがとう。じゃあ、後で』
「はーい」
私は勇太に会える嬉しさと、待っている人の多さから来る不安がごちゃまぜになった、複雑な気持ちで通話を切った。そして自転車を駐輪場に置くと、麗を待つ男子と同じように、100メートルのストレートコースのスタート地点を背伸びして見た。
 とたん、『ウォーッ!』と野太い歓声が上がった。
(な、何?何が起こったの?)


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