フェアマン~愛しい彼はハーフの男の子~
「文字通りさ。制服は持ってきていないって事」
「えっ?授業出ないの?」
「ああ。今の俺には、授業を受ける事よりミッションの方が大事なんだ。授業を受ける事まで考えていたら失敗するよ」
「そ、そう」
「ほら、日本のことわざで有名なのがあるだろ?えーっと…『二兎追う者は、一兎も得ず』だ。つまり、二つの事は一度にできない」
「まだ日本に来て間もないのに、ずいぶん日本語が上手になったね」
「ありがとう!そう言ってもらえると嬉しいよ。日本語、ますます勉強したくなったよ」
「それはよかった」
頷いたとたん、曲名は知らないが聞き慣れたクラッシック音楽が聞こえてきた。勇太の携帯電話の着信メロディーだ。勇太は『ちょっと失礼』と言うと、ジーンズの左ポケットから携帯電話を取り出し、誰かと話し始めた。
(相手は誰だろう?)
時間が気になって自分の携帯電話をチェックしてみれば、もう午前7時50分を過ぎていた。
(まだ授業開始までに時間があるところを見ると、友達からかな?)
しかし聞き耳を立てていると、勇太のしゃべり方はなんとなく堅い。あまり会った事がない人と話しているみたいだった。
(日本語で話しているところをみると、相手は日本にいる親戚の人かな?)
「じゃあ、待っているから。できるだけ早く来てもらえるかな?)
(えっ?)
私はビックリして勇太を見た。
(来る?親戚の人が来る?高校に何の用があるの?在校生の親でもめったに来ないのに…)
「何の用事?」
「え?」
驚きのあまり、何の前置きも無く勇太に聞いてしまった。
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