フェアマン~愛しい彼はハーフの男の子~
すると、琴美の声が聞こえた。声のした方…学校を見るよう振り向けば、豊満な胸をブルブル震わせながら必死に走ってやって来る琴美の姿が見えた。
(やった!助かった!)
瞬時に思う。色々ありすぎて、1人では考えをまとめられない。彼女の力が必要だった。
 琴美はすぐ側まで来ると、肩で荒い呼吸をしながらも私達をグルリと見回した。
「お待たせ!」
そして麗を見た。琴美の瞳に深い慈愛の光が宿っていた。
「おはよう、麗ちゃん」
「…おは、よう」
言うなり、麗は視線をそらした。まるで琴美の放つ光が眩しいと言わんばかりに。
「麗ちゃん、顔が見れて嬉しいよ。今日からまた、一緒に勉強しようね。お昼ご飯、食べようね」
「琴美がどうしてもそうして欲しいって言うのなら、そうしてあげる」
「うん、どうしてもそうして欲しい」
「しかたないわね。しょうがないから、してあげる」
「やった!これからまた楽しくなるね」
琴美が嬉しそうに言うと、麗はまんざらでもないのかニヤリと笑った。私は嬉しかったが、麗にヒドイ事を言った手前、素直に喜べなかった。
 すると麗は私の気持ちを見透かしたようにチラリと見た。何か言った方が良いかと思い言葉を探したが、見つからなかった。麗はしびれを切らしたよう、視線をそらしてしまった。
 ただその先には、勇太がいた。勇太と麗は目が合ったとたん、キリリとニラみ合った。今にも戦いの火ぶたが切って落とされそうだ。
(うわー、ヤバイなぁ。早くも血を見そうじゃない?…い、いやダメ。穏便にすませなきゃ。よし、モメそうになったら止めに入るぞ。2人とも無傷で授業に参加させるんだから!)
1人意気込んでいると、麗が張りつめた空気を破るようしゃべり出した。
「話しって、何?」

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