フェアマン~愛しい彼はハーフの男の子~
私は場違いなほど大きな声で言った。当然、その場にいた全員が一斉に私を見た。麗に至っては、『殺すわよ』と言わんばかりの目でニラんだ。
(プライドを傷つけて、すいません…)
「何よ、ぜんぜん大したことないじゃない」
「そうかな?大勢の異性に言い寄られていた時の君は、最高に気分が良さそうな表情をしていたけど」
「まさか!いつも言い寄られているもの。たいして変わりはないわ」
「本当に、そう思う?」
「ええ」
「俺は多くの女の子達に言い寄られた時、すごく嬉しかったけどな」
「やっぱり男ね。チヤホヤされればいいなんて」
「俺の目には、みんなオシャレで可愛く見えたよ。おかげで毎日朝から良い気分だった」
「ちょっと、その眼鏡度が合っていないんじゃない?今日改めてあんたを待っている女達を見たけど、ジャガイモかカボチャみたいな顔をした女ばかりだった。どう多めに見ても、可愛いなんて言えない。あの子達がチャラチャラ着飾っても、ジャガイモはジャガイモだし、カボチャはカボチャよ。本当の幸福感は得られないわ」
「へぇー、じゃあ高嶋さんが思う幸せって、何?」
「決まっているじゃない。1番大好きな人にチヤホヤされる事。大事にしてもらう事」
「…そうだね、俺もそう思う」
「・・・!」
麗はハッとして硬直した。
「どんなに大勢の人に『すてき』『カッコイイ』って言われても、自分が一番好きな人からそう思われないと満たされない。心の真ん中は、ずっと渇いたままなんだ」
「渇いたまま?」
「うん。一番大事な人からの愛が欲しくて、渇いたまま」
私もハッとして硬直した。麗みたいに。いや、琴美もしていた。


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