フェアマン~愛しい彼はハーフの男の子~
麗は視線を左右に激しくさまよわせた。あきらかに動揺している。おそらく彼女は今、勇太が言った通り、プライドと友情の狭間で悩んでいるに違いない。見ているこちらまで心が苦しくなってきた。
 ただ反面、ホッとしていた。
(麗は仲直りしたいと思っている!)
それだけで目的の半分はクリアーした気がした。
 すると麗は私達にもわかるほど大きく深呼吸した。そして、しっかりと私達の目を見た。
「美羽、琴美。私…」
麗は一瞬、自信なさそうに視線を外した。
(がんばって、麗!)
私は心の中で応援した。願いが通じたのか、麗は再びしっかりとした視線で見た。
「私には…必要なの。2人が、必要なの」
「麗!」
「麗ちゃん!」
「2人としゃべったり、お昼ご飯を食べたり出来ない時、すごく辛かった」
「・・・」
「寂しかった」
「・・・」
「学校へ来るのが、イヤだった…」
「・・・」
「もうあんな思いはイヤ。心が苦しくなるような思いをするのはイヤ!」
麗は私と琴美をしっかりと見た。
「仲直り、できるかな…?今までみたいに、仲良くできるかな?」
「もちろん!」
「喜んで!」
私と琴美は力強く頷いた。しかし、それ以上しゃべる事ができなかった。
―心は『私もずっと仲直りしたかったよ』と大声で叫びたいのに、涙がこみ上げできなかった。―
 だって、本当に嬉しかった。ずっとずっとこの瞬間を待っていたから。望んでいたから。
 叶って、すごく嬉しかった!
 私と琴美、麗はそろそろと歩み寄ると、体温がわかるほどすぐ目の前で立ち止まった。お互いの顔をマジマジと見れば、誰からともなく抱き合った。




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