フェアマン~愛しい彼はハーフの男の子~
 とたん、熱い涙がぽろりと頬を伝った。もうこみ上げてくる涙を押させる事ができなかった。
「うっ、うえーん!」
私は2人を抱きしめたまま号泣した。これまでためていた悲しみを全て吐き出すかのように涙を流した。
「やだ、美羽ちゃん。そんなに泣かないで。わ、私まで悲しくなってきた」
「うぇーん、うぇーん!」
「そうよ、美羽のせいで、み、みんな涙が止まらなくなるじゃない!」
琴美も麗も、釣られるよう泣き出した。3人全員で泣き出した。
 私達は抱き合ったまま、しばらくの間泣き続けた。風に乗ってホームルーム開始を知らせるチャイムが聞こえてきたが、止められない。担任の先生に『ごめんなさい』と心の中で謝りながら泣き続けた。
 私達の流す涙の成分は、たぶん80%くらいが今までモメていた事による怒り、つまり全部『負のゴミ』だ。仲良くするためには必要の無い、捨ててしまわなければいけないもの。
―『女の子は、こうやって必要のない物を外に出して生きていくんだ』、私は強く感じた。―
さんざん泣いてすっきりすると、3人でもう一度しっかりと抱き合った。
「これまでの事は全部水に流そう」
私と麗は深く頷いた。
「そうね、努力するわ」
「じゃ改めまして」
琴美は抱擁を解くと、右手を目の前にスッと差し出した。私と麗も同じように差し出し、琴美の手をの上に重ねた。そして、お互いの目をしっかりと見た。
「今日からまた、親友しましょう」
「うん、喜んで!」
「裏切ったら、ただじゃおかないわよ」
「えっ、怖ーい!」
私達は大声でアハハ!と笑った。あんまりにも大きな声だったので、担任の先生が聞きつけて飛んでこないか心配になった。『授業をサボって何やってんだ!』と怒られそうだった。



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