フェアマン~愛しい彼はハーフの男の子~
「へっ?こんな途中から行くの?教室に入りづらいよ!絶対みんな『サボったろ』って目で見るもん」
「ご心配なく。白い目で見られるのは、琴美と私だけだから」
「なっ、何で?」
「美羽はフェア・マンとまだ話しが残っているでしょ?」
「話し合い?」
「そう『大事な話し合い』。美羽にとっては、私と仲直りするのと同じくらい大事な事なんじゃないの?」
「そんな大事な事、あったかなぁ…?」
私は麗の言わんとしている事を十二分にわかっていたが、あえて知らないふりをした。恥ずかしさと不安とで、素直に認められなかった。
 麗は私の気持ちに気付いたのか、ニヤリと不敵に笑うと、『行くわよ』と言って琴美の背中を押した。琴美は心配そうな目で私を見たが、麗が何やら耳打ちすると、ハッとし、たちまち笑顔になった。
「ごゆっくり」
優しげな声で言えば、麗と共に背中を向け素早く立ち去って行った。
 残された私は気まずくて勇太と目が合わせられなかった。
(まるでお見合いに来て仲人さんがいなくなった時みたいじゃない。どう切り出せばいいものか…)
一人悩んでいると、足音が近付いてきた。その足音は私のすぐ後ろで止まった。
 おそるおそる振り返ると、案の定そこには勇太がいた。勇太は私と目が合うと、優雅に笑った。私はどう反応していいかわからず、ドキドキと大きく鼓動を打つ心臓を抱えたまま、食い入るように見た。表情は間違いなく硬直していた。
「あ、あの…」
「残念。先、越されちゃったな」
「何、が?」
「告白」
「告、白?」
「うん」


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