フェアマン~愛しい彼はハーフの男の子~
「あのさ」
「うん」
「あの日の続きを、ここでしてもいいかな?」
「あの日の続き?」
「そう。二日前、俺の家でちょっとモメただろ。村瀬さんが危ない事をしたから」
「あっ、そうだ…」
とたん、私はもっとドキドキした。あの時、私達はキスしようとして、でもカレンが帰って来て止めたのだ。
 回想していると、勇太の手が私の頬に触れた。彼の手はほのかに熱く、情熱がそこから伝わってくる気がした。いや、熱が伝わり過ぎて肌が溶けてしまいそうだった。
―だって、初めてこんなふうに男の子に触れられた。嬉しすぎて幸せでおかしくなりそうだった。―
 慣れないシチュエーションに、勇太の顔が近付いて来ても目を全開で開けたまま見続けた。すると勇太の瞳にとまどいの色がにじんだ。
「キスをする時は、目を開ける主義?」
「えっ?」
「好きな子に見つめられるのは嫌いじゃないけど、なんだか落ち着かなくてさ」
「ご、ごめんなさい!私、き、キスするの初めてだから、どうしていいかわからなくて…」
「難しく考えなくていいよ。ただ目を閉じてくれればいいんだ」
「わ、わかった」
私はギュウッ!ときつく目を閉じた。『絶対、開きませんように!』と言わんばかりに。すると勇太の小さく笑う声が聞こえた。
「そんなに一生懸命目をつぶらなくても大丈夫。寝る時のように、そっと目を閉じればいいんだ」
「う、うん」
私は言われるまま力を緩めた。しかし体はプルプルと小刻みに震えていた。
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