フェアマン~愛しい彼はハーフの男の子~
(き、緊張するーっ!)
「そう、上手だね」
勇太はそんな私を気遣うよう優しくささやいた。
 ホッとしたら、温かくて柔らかな感触が唇に触れた。まるでマシュマロみたいだった。
(今、キスしている?すごく不思議な感触。柔らかくて温かい。こんなの初めて!)
初体験に緊張しつつも、すっかり浮き足だった私は、一人夢見心地だった。勇太の様子など、気にする余裕は無かった。当然、キスが終わっても余韻に浸り、ずっと目をつぶったままだった。
 とたん、誰かが私の左頬をつついた。ビクリ!と体を震わせ目を開けると、勇太がニヤニヤしながら見ていた。
「本当に、ウブだね。キス一つでここまでウットリしちゃうなんて」
「う、ううううううウットリなんてしていないもんっ!」
「そうかなっぁ?だって唇を離しても身動きしなかったじゃないか。完全に別世界に行っていたよ」
「勇太君には見えなかったけど、今、頬に虫が止まっていて、ビックリして動けなかったの!」
「どういう言い訳しているんだよ!」
ふいに勇太は大笑いした。
「いくら眼鏡をしているからって、そこまで目は悪くないよ。目の前で起きている事くらい、ちゃんと見えるよ」
「止まっていたの!本当だもん!キスにウットリしていたんじゃないもん!」
私はプゥと頬を風船のように膨らませた。恥ずかしいから素直に認めるワケにはいかなかった。
「わかったよ、そう怒るなって」
「じゃあ、虫が止まっていたって認めてくれる?」
「もちろん!俺の目に見えないくらい小さな虫が、美羽の頬に止まっていたよ。今、ようやくわかった」
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