フェアマン~愛しい彼はハーフの男の子~
私は勇太の言葉にちょっとドキッとした。勇太が『美羽』と呼び捨てにしたから。
「ねえ」
「何?」
「あのね…『勇太』って呼んで良い?」
「…ダメ」
「どうして?」
「まだ付き合っていないから」
「ずるーい!勇太君は今、私の事『美羽』って呼び捨てにしたじゃない!」
「気のせいじゃない?ほら風が強くなってきたから、誰かが呼んだの聞こえたたんじゃない?」
「そんな事あるわけないでしょ!周りにぜんぜん人がいないもの!」
「いや、美羽って言ったの俺じゃないって」
「ぜったい勇太君だよ!」
「すっごい自信!どっから来るの?」
「ちゃんと聞いたもん!本当に聞いたもん!」
「って言うか、そこまでして『勇太』って呼びたい?」
「呼びたい!なんか…勇太君にとって私が特別な存在になった気がするから」
「じゃあ、付き合ってくれる?そうしたら『勇太』って呼んでもいいよ」
「もちろん!」
私は満面の笑みで頷いた。勇太は再び愛しそうに私を見た。
「ずいぶん嬉しそうだね」
「うん!念願の彼女になれたし、大好きな人を勇太って名前で呼べるし。もう、スゴイ幸せ!」
「じゃあ、さっそく名前で呼んでもらおうかな」
「いいよ。勇太!」
とたん、勇太は私の唇に強く唇を押しつけた。さっきとは違う。優しさとか気遣いとかじゃない。情熱的なキスだった。私は驚き座り込んでしまいそうだった。
 勇太は唇を離すと、不敵に笑った。



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