フェアマン~愛しい彼はハーフの男の子~
「はい」
最前列側に座っていた勇太は素早く立ち上がると、新垣の呼びかけに答え彼のすぐ横に立った。そして、ちょっと照れた様子で会釈し視線を外した。そんな態度はやけに様になっていて、またときめいた。
「こんな色男、そうは見たことないよなぁ。俺もマジで嫉妬している」
ドッと笑いが起こった。
「女子のみんなは、勇太が『何年何組にいるか』と言うメジャー級の情報はもちろん、スリーサイズや背中のほくろの数、位置など、非常にプライベートな内容まで知りたいところだろう」
「すっごく知りたいでーす!」
「実に正直でいい」
また笑いが起こった。私から5人離れたところに座っている麗だけ、面白くなさそうに横を向いている。しかし新垣は注意しようとしない。完全無視だ。弁の立つ麗を口で負かす事は難しいので、あえて触れないようにしているのだろう。
「だが今日は練習時間を有効に使うためにも、東京から大阪まで新幹線で移動するかのごとく、大まかな情報のみ公開してもらう。在来線のような細かい情報は、後日アポイントメントを取って聞き出すように」
「そんな事言わないで、5分でいいから質問させてよー」
「言いたいことはよくわかりますが、部はみんなのものです。個人の好き勝手には出来ません。ためしに、男子諸君にそのような時間を取って良いか聞いてみましょう」
新垣が男子生徒を見ると、全員『反対!』と叫んだ。いや、絶叫した。イケメンを見て楽しいのは女子だけ。同姓の彼らには屈辱を与える奴にしか見えないのだ。女子はブーブー文句を言ったが、和を何よりも大事にする新垣はすぐさま却下した。
「では、勇太。手短に自己紹介をしてくれ」
「はい」
とたん女子部員は静かになり、全員の視線が勇太に釘付けになった。



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