フェアマン～愛しい彼はハーフの男の子～

命名、フェア・マン

　勇太・レイシーが転入してから一週間後。相変わらず学校中の女子生徒達は彼の話題で、男子生徒達は勇太の姉の話題で盛り上がっていた。
　私は親友の琴美と、勇太が転校してきた日の昼休み、すぐ３年Ｃ組まで足を運び勇太の姉を見た。クラスの男子が、担任が『勇太の姉さんは美人だぞ』と言ったのを真に受け見に行ったら、帰ってきて『本当に美人だった！』と大騒ぎしていたからだ。
　ただ噂は瞬く間に広がったらしく、３年Ｃ組の教室前は、男女入り交じって『押すな押すな』の大混雑だった。入り口にさえ近寄れない。そのため、実際に姿を拝めたのは昨日の朝。正面玄関で勇太と歩いていたのを、人垣をかき分けやっと見た。二人の周りには、常に多くの人が集まっているからだ。
　勇太の姉、カレン・レイシーは、弟と同じく真っ白な肌に、卵形の小さな顔、綺麗な二重に青い瞳を持つ、とても美しい女性だった。やはり背が高く男子生徒と並んでもさほど変わらない。バストラインまで届く艶やかな黒髪は緩くウェーブしていて、歩くたびにフワフワと揺れた。あまりにも美人のせいか、普通の制服なのに高級ブランド品に見えた。
　しかし、中には良く思わない…妬む者もいた。
「あんな奴のどこがいいのよ。たまたま外国から来て、たまたまハーフだった。ちょっと珍しいだけじゃない」
辛辣な言葉を放ったのは、麗である。彼女はパソコン教室へ向かって移動中している最中、自慢の長いストレートヘアをうっとうしげにかき上げながら吐き捨てるよう言った。嫉妬の対象である勇太は５メートル後ろを歩いているのに。私はビックリして麗の腕をつかんだ。
「ちょっと、聞こえるじゃない！」
「別にかまわないわ。本当の事だし」
「だからって、何も本人の目の前で言う事ないじゃない。クラスのみんなだって見ているよ。文句言われたらどうするのよ」
「ハーフのアイツにケンカ売られたらどうしようって？いいじゃない、受けてたつわよ。みんなにチヤホヤされて高くなった鼻、バキッてへし折ってやる！」