フェアマン~愛しい彼はハーフの男の子~
「お、美羽ちゃん。冷静になってきたじゃない。その調子!」
「ねえ、なんで琴美はそう落ち着いていあれるワケ?勇太君とか見てドキドキしないの?」
「うーん。勇太君はとてもカッコ良いと思うけど、ドキドキはしないな」
「じゃあ、誰ならドキドキするの?」
「…笑わない?」
「笑わない!ね、誰?誰?」
「さ、佐田史郎さん…」
琴美は顔を真っ赤にして下を向いた。Fカップの胸もボヨヨン!と揺れた。よほど恥ずかしいらしい。純情な琴美を見ていたら、ちょっとイジりたくなってきた。
「ファンなのは知っていたけど、へぇー、渋いよねぇー。彼、もう50は超えているでしょ?芸能人だけあって若く見えるけど、ちょっと年上過ぎない?」
「ち、違うわよ!佐田さんの演技が好きなの。どんな役をやってもすごく上手に演じているでしょ。その力量のすごさを尊敬しているの!」
「ははぁー、なるほど。佐田さんにドキドキしているようじゃ、勇太君にはトキメかないよね。佐田さん、大人だもん。勇太君なんて、ヒヨッ子だよ」
「そ、そんなんじゃないってば!」
「あーあと5分で授業始まっちゃう。テキスト取りに行かなくちゃ!」
「ちょっと、美羽ちゃん。麗ちゃんにはナイショだよ」
「どうしようかなぁー」
私はスキップしながら職員室へ向かった。琴美の気遣いのおかげで、さきほどまでのイライラはすっかり収まった。感謝感謝である。
 しかし『麗』と言う台風は、確実に勢力を増していた。甚大な被害を及ぼすのは、時間の問題だった。


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