フェアマン～愛しい彼はハーフの男の子～

教師のかけ声で全員、表計算ソフトを開き、表の作成に取りかかった。初めての挑戦に、全員四苦八苦している。
　そんな中、開始１０分で信じられない言葉が聞こえてきた。
「勇太、もう終わったのかよ！」
勇太の隣に座った男子生徒の言葉にハッとして、勇太を見た。勇太は照れくさそうにみんなに向かってペコリと頭を下げた。
「どれどれ、ちょっと見せて」
女性教師は確認のため勇太の側へ行くと、彼が使っているパソコンの画面をのぞき込んだ。
「んー、完璧！教科書のお手本がかすんで見える、スバラシイ出来だわ」
「マジ？勇太、やり方教えろよ。俺、ちっともわからないんだ」
「俺も！次は俺の番な！」
「私も教えて！武田君の次は私ね！」
あっと言う間に勇太の周りには、テキストを手にした生徒が群がった。私はパソコンの操作は得意だったが、勇太と会話できる良いチャンスが出来たと思い、テキストとシャープペンシルを持ち椅子から立ち上がった。
「こらこら、レイシー君にばかり頼らないの。だいたい、本当にわからないの？ヨコシマな事考えて近寄っていくのは、授業以外にしてちょうだい」
「本当に、わからないんですぅ」
「レイシー先生、教えて！」
教師の制止も何のその、女子生徒達はワラワラと勇太へ近寄っていった。それを見ていた男子生徒達は、ちょっと嫌そうな顔をした。モテる勇太がうらやましいのだろう。
「俺のオヤジもパソコン関係の仕事をしていたらなぁ。こんな表、ちゃっちゃと作れる技術教えてくれただろうに。そして、モテただろうに…」
「その前にまず、モデル並の容姿を授けてもらわなきゃダメだろ。ドラマの脇役にしか見えないそのツラじゃ、いくらパソコンを使いこなせても、オタクにしか見えないぜ」
「ひっでぇな、お前。そりゃ言い過ぎだろ！俺にだって良いところは沢山あるんだよ！」