フェアマン~愛しい彼はハーフの男の子~
「まったく違う文化の国に来て知り合いだってほとんどいないんだよ。仲の良かった友達はみんなアメリカにいるし。すごく寂しいと思う。第一、チヤホヤされるのだって大変だよ。さっきもみんなで寄ってたかって勇太君に聞いて。終わった後、勇太君すごく疲れた顔していた。でも、文句の一つも言わなかった。エライよ!…なのに麗は『疲れていい気味だ』って呟いた。いくら勇太君がうらやましいからって、言うことが冷たすぎる!」
「うらやましくなんかない!単純にお高く止まっているのがムカつくだけ!」
「だから、お高く止まっていないって!」
「ハッ、心の中じゃどうだか。『みんな俺にチヤホヤして当然だ。イケメンだし』って、思っているかもしれないわよ。パソコンオタクのくせに」
「・・・!」
『オタク』と言う言葉が私の心にグサリと突き刺さった。まるでナイフのように。謙虚に生きている彼に『オタク』と言う言葉を投げつけるのはあまりにも酷だと思った。まるでそれしか能が無い、馬鹿な人間だと言っているように聞こえた。
(許せない…麗が絶対許せない!)
私は今度ばかりは謝らせようと、麗の腕をつかもうとした。
 ふいに、右隣に誰かが立った。見れば、勇太だった。
(勇太君!)
勇太はいつになく険しい表情をしていた。
 麗は勇太を見ると『フン』と言って立ち上がり、胸の前で腕を組んだ。『かかってこい』と言わんばかりに。
「高嶋さん。さっきのは言い過ぎだと思う。謝って欲しい」
「何で?私、事実を言ったまでよ。謝る必要なんてないわ」
「高嶋さんは俺をバカにしたつもりかもしれないけど、俺はそうは思わない。君は父や母をバカにしたんだ」
「日本語があんまりしゃべれないんじゃ、そう思ってもしょうがないわね」
「父や母は長い間、パソコンの開発に愛情と情熱を注いできた。世界中の人が便利で幸せに暮らせるようにと。今ここにあるパソコンも、両親が手がけたものばかり。俺はそんな両親をとても誇りに思っている。だから、パソコンに興味を持ったし、色んな事を勉強した。そして詳しくなった。オタク呼ばわりされる筋合いはない!」




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