フェアマン~愛しい彼はハーフの男の子~
「人よりもネチッこくパソコンに関わり合って詳しいのなら、オタク以外の何者でもない。私の考えは間違っていない。だから絶対、あやまらないわ」
「麗!どうしてそこまで考えがひねくれているの。信じられない!」
「もういいよ、村瀬さん。ここまで言っても考えが変わらないのなら、ずっと平行線だ。あきらめよう」
「勇太君…」
「俺なら大丈夫。それに、このクラスのみんなは賢い人ばかりだから、どっちが間違っているかは全部いわなくてもわかるはず。俺はこれまで通り高校生活を送るよ」
勇太は言い終えると、すばやくテキストやノートを持ち教室を出ていった。その後を、一番仲の良い男子生徒が慌てて追いかけていった。
 勇太の背中はとても寂しそうに見えた。
 残った私達は水を打ったような静けさの中、少しの間たたずんでいた。誰も何もしゃべろうとしない。せいぜいお互いの顔を見合わすだけだった。
 神様はそんな私達を可愛そうに思ったのか、すぐにチャイムを鳴らしてくれた。いつもと同じ音量だろうに、鼓膜を破りそうなくらい大きく聞こえた。
 とたん、私は弾かれたように教室を飛び出した。
「美羽ちゃん!」
後ろから琴美の声が追ってきたが、止まらない。いや、止まれない。何も持たず全力で廊下を駆け抜けた。
 ショックだった。麗がまったく勇太を受け入れないのが、ものすごくショックだった。
 麗は本当に頭が良い。さほど勉強しているとは思えないのに、学校の成績は常にトップレベルを保っているし、バドミントンも全国大会で上位に食い込んでいる。
 だから麗は勇太が新しい環境に慣れようと苦労している事や、みんなにチヤホヤされて嬉しい反面、ストレスを抱え疲れている事を理解し、かばうと思っていた。賢い彼女なら言われずともわかると思っていた。
 しかし、逆だった。嫉妬の固まりになり、やっつけようとした。『自分より劣っている』と思わせようとした。
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